Artist stories 〜大野幸子(前編)〜
新進気鋭のアーティスト
「大野幸子」の挑戦
異色の経歴を持った・・・と形容される人がいるが、彼女もまた大学を卒業後、キャリアウーマンから実業家、そしてアーティストへと転身をした”異色の経歴”を持ったアーティストだ。
彼女の作品を目にして、そして会って一つ一つ話を聞いてみると、そのキャラクターからなるべくしてアーティストになった方なのだなと感じさせられる。
非常にパワフルで、内からのエネルギーを周りに伝播させられる稀有な存在である。
作品にもそういったエネルギーやダイナミックさがあり、見た瞬間に何か感情に直接訴えかけるものが多くある。
大野さんにアーティストに転身した経緯、制作におけるテーマやアートへの考え方、プライベートに関することなど質問にお答え頂いた。
経歴:
東京都在住のアーティスト、主に抽象絵画を制作。
1987年生まれ、福岡県宗像市出身 慶應義塾大学文学部 社会学専攻 卒業 大学卒業後、マーケティングベンチャーにて法人営業を担当2014年パートナーと共に合同会社ナンバーツー設立。コーチングや企業研修のマネジメントを行う。2017年より、経営者と1対1で対話し、経営理念や社名、商品名をコピーライティングするココロイキを始動。2020年より、画家としての活動を本格始動。「直感・即興・無意識」をテーマに、その時々のインスピレーションを画面に起こす即興的なプロセスで制作を行う。そのプロセスを経ることで、観る人の中に何か開放的なエネルギーや、一歩を踏み出す力を宿すことが願い。生きる中で常に果たしたいのは「美しいものに触れ、見続ける」こと。自らの手で、最上に美しいものを生み出すことを目標に活動を続けている。
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「卒業制作を見た知人に3時間説得され、アーティストの道へ」
Q1:作品を描き始めたきっかけはなんですか?
実はそれまで絵に関するなんの経験もなかったのですが、33歳になってからいきなりアーティストとしての活動を始めました。32歳のときに初めて3ヶ月間のアートプログラムに参加したのですが、その卒業制作を見た知人から、画家になることを強く勧められたことがきっかけです。
「絶対にこっちの道に進まないといけない。責任を取るからこの道に進んでほしい。」と3時間説得され、心を決めました。
ーーその時の転向理由は?
① 未知の領域に挑戦することへの好奇心
②「アーティスト」という存在への自身のしっくり感
③ アートであれば、より多くの人に自分が届けたいものを届けられると感じたから
といったことが決め手になりました。
「常に実験を繰り返し新しい表現や、絵との関わりを探る」
Q2:どんなテーマの題材が多いですか?
自分のその時々の「感覚」や「感情」など、今自分に起きている身近なことを テーマ にすることが多いです。 私自身は日頃から「意識の深掘り」や「視座の更新」に取り組むことが多く、常に何かしらの課題と向き合っています。
例えば、自分の中にある「女性性と男性性の融合」がテーマのときには、そもそも女性性とは?男性性とは?を表現した上で、それを合わせたものを描いてみたり。
自分が「感情を感じる」ことが不慣れだと思ったら、感情を描いてみたり。
最近では「出し惜しみしない愛とは?」というのをテーマに10枚程描いて、描きながらその意味を理解したり。。。
という感じで、その都度リアルなテーマでキャンバスに向き合うことを心がけています。
予めテーマを設けることもありますが、実は設けないことも多く、描いている中でテーマが浮かびあがってきて気づきがある。なんてことも絵を描く意味。
常に「実験」を繰り返しながら新しい表現や、絵との関わりを探っているのが、現在地です。
「アートでしか起こせない対話や内省を見ている人に起こしたい」
Q3:絵を描く上で大切にしていることや考えていることはありますか?
「絵をみた人の中に、何かを起こすことができるか」「目で見て楽しいものより、心で見て楽しいものになっているか」ということを常に考えながら作品を制作しています。
私含めてみなさんの中にも「居心地のよい」もっと言えば見ていて「楽」な絵があると思います。
イメージとしては、お部屋に飾ってインテリアとしてよく馴染む絵みたいなもの。私自身インテリアや模様替えが好きなので、部屋に飾りやすい絵を描きたくなることもありますが、踏みとどまるようにしています。
そんな時にはいつも「私にとって本当にそれをやる意味があるのだろうか?」と自問します。
私がアートに携わることの意味として、「アートでしか起こせない対話や内省を見ている人の中に起こしたい」 というものがあります。
その鑑賞体験を通じて、深い癒しや自己承認が起きることが私の願いです。そのためには、感情を揺り動かすような作品としての強さが必要だと考え、作品力の向上に取り組んでいます。
その結果私の絵は、当たり障りのないものにはならないかもしれません。
人によっては、インテリアと馴染むようなやさしい絵を好むかもしれません。 だけど私は、その方の人生に織り込まれるような、その方にとって大事なお守りになるような、心揺さぶるストーリーのあるものとして、絵をお渡ししたいと思っています。
「ポジティブなエネルギーや願いを乗せる」
大切にしていることは他にもいろいろありますが、「ポジティブなエネルギーや願いを乗せる」ことも常に意識しています。
描いた絵は、お相手のおうちやオフィスなどすごく大事な場所に飾られます。 そんな場所に飾られる絵にネガティブなエネルギーが乗っていたとしたら、 私なら悲しくなります。
もちろんテーマとして哀しみや苦しみを扱うものものもあります。だけどそういったテーマであっても救いや解放を願って描く。
私自身先が見えなかった絵であったとしても、先の見えなさを赦す絵になって欲しい。など、いつも未来のオーナーに対して私なりに願いを乗せながら描いています。
もちろん、ポジティブなテーマについて扱うときはなおさらですが。
絵に乗っているであろう見えないエネルギーにこそ意識を向けながら 、私自身の精神修行にもせいが出る毎日です。
Q4:どんな時に絵を描きたくなりますか?
普段は、結構な頻度(3、4ヶ月に1回)で個展を開催しているので、「描きたい」というよりも「描かなきゃ!」という気持ちで描くことが多いです。
それで良いのか?という気持ちもありつつ、目標があると力が出やすいタイプでして。
今はそんな感じをベースとしつつも、「自分の心が大きく動いた時」は筆を取りたくなります 。以前自分の至らなさに大直面し、衝撃を受けたことがありました。
あまりの衝撃で「せっかくなら絵を描こう」と思ってスピード感を持って描きました。正直「なんじゃこりゃ?」と思えるような変な作品ができたのですが、自分の絵のメンターや他の人から「めちゃくちゃいい!」「これが好き!」という感じで大きな反響がありました。
その経験を得たときに、人の心にふれるかどうかは絵のうまさでもかけた時間でもなく「一種のリアルさ」に宿る のではないか。という仮説が自分の中に生まれました。
その経験を経てからは、自分が表現したいと思う感情や出来事があった際は、できるだけ鮮度の高いうちに表現してみることを心がけています。
Q5:どういった時間帯に作品を作られることが多いですか?
できるだけ、朝イチの一番エネルギーが高い時間につくるようにしています。
しかし実際は午後からのスタートになるこも多く、もっと早く始めたいなぁと思って取り組み中です。
夜妙に乗ってくることもありますが、基本朝型にしたいと思っています。
やはり晴れた日などは、陽光を感じながら描いている時間の幸福度は確実にアップします。